今回のJournalで取り上げるのは、非常によく似たデザインを持つ2本のPatek Philippe、5000Gと5028Gです。それぞれカラトラバとゴールデン・エリプスのファミリーとして、1990年代半ばから2000年代初頭にかけて、中でもWGのモデルは各500本限定で生産されたとされています。
この2本のリファレンスがその他のPatekと比べて特別だとされるのは、“2-tone graphic”と呼ばれるシンプルなデザインと、なによりもそれがフェラーリのためにデザインされたという、まことしやかな噂によるものでしょう。
カラトラバの5000Gは、シースルーバックにデプロイバックルの仕様。端正な文字盤と好対照な、ある意味でPatekらしい豪奢なディテール。
フェラーリに依頼されてPatekがデザインしたものの、紆余曲折の末にフェラーリの名前は無しで製品化されたというこの噂に終止符を打ったのは、近年になって発行された『パテック フィリップ インターナショナルマガジン』内のある記事でした。
記事内では、当時フェラーリを購入した顧客に提供するためにと依頼されデザインされたモデルが、紛れもないこの5000Gであること、デザインされた時計を見たフェラーリ側が、フェラーリのロゴと社名を文字盤に、さらにケースバックにもフェラーリの名前を刻印することを製品化の条件としたこと、そしてその要求を飲まなかったPatekが、フェラーリの名前は無しのままこのモデルをバーゼル・フェアで発表したことなどが、赤裸々に綴られています。
これらは非常に興味深い話でありながら、記事が掲載された『パテック フィリップ インターナショナルマガジン』がPatekの顧客にのみ送付されるエクスクルーシブなマガジンであったことから、その詳細が広く知られること機会はこれまで多くありませんでした。
手巻きのモデルが多いエリプスとしては珍しく、自動巻きのムーブメントを搭載する5028G。尾錠もケース同様のエリプスデザイン。
ヴィンテージのフェラーリのダッシュボードを想起させると長年にわたって言われ続けた文字盤のデザインは、やはり実際にフェラーリを参考にしてデザインされたものであったわけです。
このとき参考にされたのは、フェラーリの中でも500 TRCというモデルの回転計で間違いないでしょう。フォントやレールウェイのデザイン、また目盛の逆三角形まで、いかにも計器然とした飾るところのないデザインが時計に落とし込まれることで、最高級の時計であるPatekに軽妙な遊び心をもたらしていることがお分かりいただけると思います。
さらに500 TRCの回転計を製造していたのは、Patekと同様にマニュファクチュールとして知られるジャガー・ルクルトの中で、航空機や自動車向けの計器を製造していた部門でした。この事実も時計を趣味にする人にとっては惹かれる点ではないでしょうか。計器の上部にちらりと見えるロゴに見覚えのある方は、きっと少なくないはずです。
幻のコラボレーションのために製作され、ほとんどのコレクターにとってはむしろ幸運なことに、フェラーリの名前は刻まれることなくリリースされた2本。どちらもボックスと保証書付きのフルセットで入荷しています。








