眼鏡とあわせて楽しめる唯一と言っていいアクセサリーのひとつである、グラスチェーン。しかし改めて探してみると、男性でも自然に身に着けられるようなものはまず見つかりません。過度に装飾的であったり、あるいは華奢であったりと、道具としての実用性が十分でなく、また着用する人を超えてその印象が強すぎるものがほとんどです。
いずれ理想のグラスチェーンを一から作ることができれば、そう思っていたなか、今回一緒に取り組んでいただいたのがFabulous Soundsの吉田さんです。共通の知人が多いこともあり、グラスチェーンを作るのであれば吉田さんとやりたいと密かに温めていました。
AFTERで取り扱う眼鏡や時計のように、どこまでも道具として前に出すぎることがなく、それを身に着ける人のスタイルの一部となるようなグラスチェーンが完成しました。
11月8日(金)から11月17日(日)までの10日間、AFTERの店頭で受注会を開催いたします。
牧野:どうせ作るのであれば下手な相手とはやりたくない、ジュエリーのことをきちんと分かっている方とやりたいと思っていたんですね。それでお願いしたところ、快諾していただけて。
吉田:共通の知人が多いことに加えて、僕自身も眼鏡が好きで、これまでにAFTERで眼鏡を買ってもいましたよね。そこで話を進める中で、牧野さんがどういうものが欲しいのかなんとなく見えてくる感覚もあって、自然とデザインは固まっていきました。
牧野:僕や周囲の友人くらいになると、歳を重ねるごとに手元が見えにくくなってみんな老眼鏡をかけるようになってくるんですよね。でもそうなると、飲み会の席などで眼鏡を外したときにそのままなくしちゃうこともあって。
吉田:笑
牧野:そういうストレスは周囲も含めて抱えていて、でもそこでおすすめのチェーンがないかと聞かれると、これまではないとしか言えなかった。一般的なグラスチェーンというと、男性が着けられるものはまずないんですよね。素材がメッキだったり、変な装飾がついていたり、そもそもチェーンじゃなくて紐だったり。それならば自分で作ってしまえばいいなと思ったのがそもそものきっかけです。
吉田:なるほど。
牧野:そこでよく考えてみると、別に老眼鏡に限らずグラスチェーンがしっくりくるシーンは多いなと思ったんですね。それこそサングラスであれば運転中にトンネルに入ったときなど、一時的に外して持てあますことは誰しもあると思います。そういうグラスチェーンを、自分のようにネックレスを着ける習慣のない人でも自然に身に着けられるような抑制の効いたデザインで形にできればなと。
吉田:最初に既製品のグラスチェーンをサンプルとして見せてもらったんですけど、例えばチェーンを眼鏡に繋ぐゴムのパーツ、ここにいわゆるクラスプが付いていたりしましたね。
牧野:そうですそうです。
吉田:これが何のために必要なのかお伺いすると、ゴムが劣化したときに簡単に取り替えられるようにするためだと。でもそれって作る側の都合でしかなくて、実際にグラスチェーンを着ける側からすると、よりによって目立つ部分にそんなパーツは要らないんじゃないかと思いました。
牧野:格好のいいクラスプはないですかと聞くと、別になくても良いんじゃないかと言っていただけて。そういうふうにして男性でも身に着けられるような、道具としてのグラスチェーンが形になっていきました。
吉田:うちのお店にはレーザー溶接機があるので、ゴムを交換したいときはパーツを直接繋ぎ直してしまうことができます。お店も近いので場合によっては即日対応も可能なくらいです。でもこれが大手のメーカーだと、確かにクラスプで繋ぐことで妥協をしてしまうのかも知れないですね。
牧野:なるべくミニマルに、道具として無駄のないように作って欲しいという要望を全部叶えてくれましたよね。
吉田:なのでゴムとチェーンを繋ぐ部分のパーツも、できるだけデザインの邪魔をしないように控えめなサイズのものを選びました。
牧野:あとはゴムの部分のパーツですよね。
吉田:そうですね。ゴムをフィットさせるためにスライドさせるパーツですが、これも本来はゴムのパーツとセットになっているものが最初からあるんです。でもそれは素材が合金製だったので、チェーンが貴金属なのにそれはどうなのかと思って。なのでチェーンの素材に合わせて、そのパーツも一から作っています。
牧野:ここまで普通はやらないですよね。
吉田:もしかすると考えつく人はいたかも知れませんけど、それをきちんと形にする人はいなかったですよね。このパーツを一から作ったもう一つの理由は、SV925やK18YGの刻印と、AFTERのロゴをきちんと入れておきたかったからというのもあります。大手のメーカーだとそのためにプレートのようなパーツを入れたりしますが、それもやっぱり作る側の都合ですよね。洋服で言うところの、各国語での取扱表記が書かれたタグのような気持ち悪さがある。
牧野:確かに。
吉田:それも最初からオリジナルのパーツを作ってしまえば全て解決します。もちろんコストのことを考えれば非合理的かも知れませんが、そういう話はいったんなしにして、とにかくシンプルにすることに妥協をしませんでした。そういう姿勢のような部分が誰にでもできるようで、なかなかできないことかもしれません。
牧野:結果として、素材も含めてできることは全てしたという感じになりましたね。
吉田:それに言ってしまえばミニマルにしただけとも言えますけれど、単にシンプルにすればいいかというとそうではないですね。これはジュエリーに長く携わっている中でも感じることですが、0.1mm単位でパーツのサイズをどうするか、そういったバランスにはこれまでに数多くのジュエリーを見てきた経験が出るところかなと思います。何も考えずに下手なデザインにしちゃうと、どこかで締まりきらない印象になったりするんです。
牧野:悪目立ちしない、良い塩梅に仕上げてくれましたよね。本当に絶妙だと思います。チェーンの種類についてはSV925とK18YGのそれぞれに2種類ずつ、吉田さんがセレクトしてくれた中から最終的に好みのものを選ばせてもらいました。
吉田:おもしろいのはK18のボールチェーン、これは特に牧野さんに気に入っていただけたかなと思います。このチェーンはK18YGのみでの展開です。
牧野:あとはCartierで使っているのと同じチェーンを、SV925とK18YGのそれぞれで作っていますよね。
吉田:カットオーバルチェーンですね。さらにSV925のみで使っているのがオーバルチェーン、こちらはエルメスで使っているものと同じチェーンです。
牧野:SV925は絶妙にいぶしているおかげで、より肌馴染みがよく身に着けられますね。
吉田:シルバーに関しては全く加工のないぴかぴかの状態も違うと思ったのですが、この加工の加減も難しかったです。一般的ないぶし用の薬品だと黒くなりすぎてしまうので、それとは違う薬品を使って、うっすらと色づくような加減に加工しました。
牧野:道具としての意味がありながら、ちょっとした色気も感じられるようなものが当初からの理想で、そういう意味では印象が強すぎても、逆に繊細すぎてもよくなくて。でも結果としては、男性でも女性でも嫌味なく身に着けられるように仕上がりました。どれを選んでいただいてもすごく満足できると思います。
吉田:これまでファッションシーンで、グラスチェーンが主役になったことってまずないと思うんですよね。でも今回、それだけのポテンシャルがあるものができたと思っています。
牧野:美しい道具という意味では、それこそ10eyevanとの相性は間違いなく良いですね。EYEVAN 7285であれば、7285ならではの控えめながら芯のある装飾をチェーンによって引き立てられるような印象で使ってみてほしいです。
吉田:ええ。
牧野:グラスチェーンという道具としての意味があるものだからこそ、普段ネックレスは着けないという人にも着けて欲しいと思っています。これ以上には手の加えようがない、本当にずっと定番として使ってもらえるチェーンです。
受注会の期間は11月8日(金)から11月17日(日)までの10日間です。受注会にて非常にご好評をいただいたため、改めて定番としてお取り扱いをすることが決まりました。店頭にてオーダーを受け付けるほか、下記からオンラインでご購入いただくことも可能です。
オンラインでご購入いただいた注文につきましては、発送まで一週間から10日ほどのお時間をいただきますことご了承ください。