GARGOYLE / ROCK

Oct 1

眼鏡の生産が高度に機械化する以前のフランスで、主に1940年代から1950年代にかけて手作業で生み出されたフレーム・フランス。中でも特に目をひくデザインで知られ、前衛を意味する”avant-garde(アヴァン・ギャルド)”にカテゴライズされるいくつかのモデルがあります。今回紹介するのは、その中の”GARGOYLE(ガーゴイル)”と”ROCK(ロック)”と呼ばれるモデルです。

もちろん同じ名前がついているといっても、個体によって生産されたファクトリーや年代は様々で、オリジナルのデザインがどのような背景で生まれたのかは判然とはしていません。しかしその圧倒的に特徴的な見た目には、一目でそれと分かる、物自体の説得力が存在します。

上がガーゴイル、下がロック。
眼鏡のデザインにあたっては、フレームの外形とレンズの形を合わせるのがセオリーで、普通のアプローチではこういったデザインにはまずならない。
それがこうして形になっていること、しかもそれらがすべて手作業で切削して生み出されているのは本当にすごいことです。

一見して分かるデザイン以外にも、フレーム・フランスに独特の特徴はいくつもあります。

まずは素材に使われているセルロイド。現代ではほとんどアセテートに取って代わられてしまった素材ですが、鼈甲のような豊かなツヤ・奥行きのある色合い・固くしなやかであることが特徴で、フレーム・フランスならではの独特の色っぽさには不可欠な要素です。

フロントとテンプルをつなぐ蝶番にも、当時のフレームにしか見られない置き蝶番が用いられています。フレームの上にそのまま置いたように見える置き蝶番は、その部分だけグッと厚みが増すことで、上から見たときに他にない存在感があります。かけている本人にしかなかなか分からないディテールです。

舟を漕ぐ櫂に似たことから名付けられた”パドル・テンプル”が特徴の一本。薄くエッジの立ったフロントは硬い素材であるセルロイドならではで、テンプルに金属製の芯が入っていない1940年代のもの。フランス人が好まないことから数の少ないブラックカラーも特徴。

これらのフレームは、現代の感覚からすると一見奇異とさえ言えるデザインかもしれません。しかし見方を変えると、眼鏡が必ずしも単なるファッションアイテムではなかった当時に、ファッションとして一般に受け入れられるか否かを基準に生まれたわけではない、フランス人の純然たる感性が生み出したピースであるとも言えます。

なにより見た目の印象に反して、実際に顔にかけたときの顔馴染みのよさは格別です。この辺りもフレーム・フランスがよくできているところだと思っています。

非常に珍しいバイカラー。今でこそ当たり前になった二色のカラーリングも当時はほとんど見られず、多くの人から初めて見たと言われた一本。セルロイドならではの滲み出るような色合いも魅力的です。

ことさらではない服装に、でも眼鏡はアヴァン・ギャルドを合わせる。こういった着方が今らしいのは言うまでもありませんが、その以前に物として抜群にかっこいい、現代の眼鏡にはない造形美があるのがなによりの魅力だと思っています。

置いてあるのと実際に顔にかけてみるのとでは全く違う、フレーム・フランスならではの顔馴染みのよさ。一度こういうものをかけてしまうと、他の眼鏡では満足できなくなってしまうほどの説得力を持っています。

ぜひ店頭でそのすごみを知ってもらえればと思います。下記より来店の日時をご予約いただけますと、優先的にご案内することが可能です。ご来店をお待ちしています。