Interview

New Collection from 10 eyevan

99,000 jpy

EYEVAN 7285とならびAFTERで取り扱う10 eyevan。スペシャルな数々のパーツから始まったブランドは、全体としては過度なデザインを避けながらも、玉型のフォルムやパーツ同士の自然な調和を突き詰めることで、スマートでモダンなコレクションに仕上がっています。

そんな10 eyevanから2年ぶりの新シリーズとして登場したのが、シートメタル。これまでの10 eyevanのイメージからすると意外にも映るアプローチには、やはりブランドがスタートした当時から変わらないフィロソフィーが反映されていました。

EYEVAN 7285 Tokyoで店長をしていた自分だからこそ聞けた、10 eyevanのデザイナー中川さんのこだわりをお伝えします。


— チタン製のシートメタル

今回の新しいシリーズにおいて、なによりも特別なのは素材として用いられるチタン製のシートメタルでしょう。いわゆるシートメタルというと、主にドイツのメーカーが用いているような薄くシャープな素材の印象を持つ方がほとんどだと思います。

しかし10 eyevanで採用したのは、しっかりとした厚みのあるチタン製のシートメタル。これを複雑な工程の中で何度も圧延を繰り返すことで密度を上げ、最高の状態にして素材として使用しています。

こうして最高の状態になったシートメタルの表面は、iPhoneのカメラで撮ってもその状態の良さが分かるほど。とても滑らかなテクスチャを持ち、素材自体の強度が高いだけでなく、塗装が非常に綺麗にのることも特徴です

また十分な密度としっかりとした厚みがあることで、エッジに丸みをつけることや、ブリッジに動きを出すことが可能となります。

結果として、シートメタルという言葉からイメージされる平面的なものとは大きく印象の異なる、非常に抑揚に富んだデザインが可能となりました。

10 eyevanはブランドがスタートした当初のメタルのコレクションから、一貫して素材にこだわっているブランドです。メタルのフレームでは丸山さんという熟練の職人に最高のチタン線を用意してもらっていましたが、今回のコレクションではこのシートメタルがそれにあたると言えるでしょう。


— 新しいクラシック

デザイナーの中川さんは眼鏡業界に入った当時、そもそもシートメタルの眼鏡はあまり好きではなかったそうです。例えば自動車だと、いち早く電気自動車に興味を持つ人がいる一方、昔ながらのクラシックカーを好む人もいるように、2000年代にまだ最新の技術だったシートメタルは、当時の彼にはそのように写っていたのだといいます。

しかし誕生から四半世紀が経ち、シートメタルもある意味ではクラシックな技術だと言えるようになってきたのではないか、そのようなタイミングで取り組んだのがこの新しいシリーズです。

デジタル時計も、20~30年も前のものとなると目新しさだけでない魅力を感じることができるような、そういった感覚だとも言えるのではないでしょうか。


— ディテールへのこだわり

もちろんこのシートメタルのシリーズでも、これまでの10 eyevanが全てそうであったように、あらゆるディテールに目立たずとも徹底的なこだわりが反映されています。

蝶番とフロントやテンプルを固定するのに用いたのはリベットのみ。開発段階ではロウ付けとリベットを併用することも検討したようですが、ロウ付けを用いると蝶番と本体を同じカラーにしなければいけないという技術的制約があったことから、あくまでリベットのみで固定したそうです。

今回新しくラインナップされたベージュのようなカラーリング(14S)は古いメルセデスに着想を得たもの。金属の粒子を混ぜた塗料を吹きつけ最後にトップコートを施すという自動車と全く同じ塗装は、非常に強度が高く、金属らしい光沢感が特徴です。

塗装方法にそのようなこだわりがあったからこそ、そもそもの着想源となった古いメルセデスに見られたのと同じ、クロームメッキのグリルのような要素をどこかで入れておきたかった。そのためにも蝶番は素材の色のまま使用し、あえて色を分けることにこだわったそうです。


— Silver 925

リベットに用いられる素材はSilver 925、10 eyevanのブランドがスタートした当初から、さまざまな場面で用いられてきた素材です。

このリベットを磨く際、普通に磨いたのでは周囲のテンプルにも研磨用のバフがあたって塗装が剥げてしまうため、リベットの部分にだけ穴を開けたようなプラスチックの板をあてがって、周囲を保護した上で研磨をしています。

その研磨にしても通常よりもはるかに時間がかかる、まさに本当に意味でのハンドメイドだと言えるでしょう

またテンプルエンドにはSilver 925製のエンドチップが装着されています。これは眼鏡全体の重心を少しでも後方にすることで着用中のずれを軽減する、ブランドがスタートした当初から採用され続けているディテールのひとつです。


— セルフレーム用の鼻パッドの足

徹底的な作り込みは、かける人しか見ることのないフロント裏面にも現れています。

金属製のフレームの場合、鼻パッドを留める足とフロントはロウ付けによって固定しますが、この際に設置面が小さいほどより精度の高いロウ付けができます。

しかし今回の10 eyevanでは、通常ではセルフレームに用いられる設置面積の広い足が用いられています。金属フレーム用のものを用いる場合と比べて非常に手間にも関わらず、設置面の狭い通常の足だと素っ気ない印象になってしまうため、わざわざこの足を使っているということです。

そうして丁寧にろう付けをした後、レーザーによってブランドのロゴが刻印されます。またレンズの周囲には、これまでの10 eyevanと同様にブランドロゴを意匠化した模様が緻密に刻印されます。


— 特別な普通

今回の新モデルの開発では、ここで紹介しただけでなく様々な苦労があったと聞いています。まさに効率の真逆で、ある意味では無駄なことだらけ。先ほどご紹介したSilver 925のリベットも、実際に生産を担う工場の方からすると本当に面倒な話だったと思います。

しかしそれがないと、単なる普通になってしまう。そうではなく普通であって普通じゃないような、特別な普通を目指す以上、いずれのこだわりもやはり避けては通れない道でした

こういったことに実直に取り組むブランドは他にありません。お金をかけずに高そうに見せるのが普通な中で、コストをかけて一見では分かりにくいことをしている。その上で、道具である眼鏡として無駄なことは一つもしていない、本当に稀有なブランドです。


— 10 eyevanならではのシートメタル

今回のシートメタルは、いわゆるドイツ的なものとも、日本の一部のメーカーが今でも作っているようないなたいものとも違う、既存のシートメタルのイメージの間の間の間を探るようなアプローチで生まれたものです

実際のところシートメタルといってもさまざまで、シートメタルだから今あるようないずれかのイメージで仕上げるしかないわけではない。むしろ多くの人が幅広い可能性を見出していない方向性にこそ、新しい価値を提案する余地があるのではないか。

合理的なアプローチであるはずのシートメタルが、天然素材やクラフト的な作りといった非合理的なディテールをそなえることで、クラシック好きを含めてあらゆるお客様にすっと受け入れてもらえるものに仕上がりました

これまでに様々なアプローチで特別な普通を生み出してきた10 eyevanが、その文脈の中で新しく提案するシートメタルです。ぜひ店頭でご来店ください。

牧野弘生

2011年 株式会社アイヴァンリテーリング入社
2012年 EYEVAN大阪ギャラリー&EYEVANバーニーズニューヨーク神戸店 店長
2016年 Oliver Peolples大阪 店長
2017年 EYEVAN 7285 Tokyo 店長 EYEVAN 7285 & 10 eyevanの数多くのFlagship・別注を手掛ける。
2023年 独立、AFTERをオープン

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