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Rolex

Ref. 1625 Thunderbird

この数年間、ヴィンテージロレックスの世界でドレスモデルが再評価されるなか、改めて注目を集めているモデルがあります。

それが、米軍のアクロバットチーム”サンダーバーズ”の隊長の退役記念モデルとして別注されたことから始まったThunderbird。スポーツモデルらしすぎることもドレスモデルらしすぎることもなく、端正ながら力強い存在感を持つ、Rolexの中でも唯一無二の魅力を持つモデルです。

Thunderbirdはヴィンテージロレックスの中でも鬼門とされています。個体の絶対数が少ないことからパーツや仕様の整合性が取れているかの判断が非常に難しい上に、何かしらのパーツが交換されていることがほとんどです。

今回ご紹介するのは、Thuderbirdの中では3世代目にあたるRef. 1625のうち、整合性とコンディションともに申し分のない初期中の初期の個体。針とインデックスの形状がひとつ前の世代であるRef.6609を引き継いだ仕様であること、カレンダーの窓に枠がつくこと、夜光が初めから付いていないこと、そして夜行がないことでミラーダイヤルのツヤが比較的よく残っていること、この辺りの特徴が特に目をひく素晴らしい一本です。

(上)夜光がないことでツヤがよく残ったままのミラーダイヤル。Thunderbirdのダイヤルには夜光が付くものもあるが、その場合は素材にラジウムが用いられているため、その影響でダイヤルは劣化が激しいものがほとんど。

重ねてになりますが、Thunderbirdは本当に曲者です。例えばダイヤルに夜光が付いている場合、年式的にはラジウムでなければならないはずがトリチウムであることもままあり、その判別は困難を極めます。

またそのダイヤル自体も、そっくりなデザインのデイトジャストのものと入れ替えられていることが多く見られます。本来はデイトジャストのダイヤルの方が微妙に大きいため、その場合は外周を削ってサイズが調整されており、6時位置のSWISS表記が見えなくなっています。見ればすぐに分かることではありますが、知らない人であれば見逃してしまうことでしょう。

さらには以前、本来であればステンレスのモデルについているはずのホワイトゴールド製のベゼルが、イエローゴールドメッキをした上で金無垢のモデルに装着されている個体を目にしたこともあります。

これらの例からも、個体の絶対数が少ないために、整合性の合うパーツだけを後から入手することがまず不可能であることがよくお分かりいただけると思います。

(上)はっきりと確認できるSWISS表記は、ダイヤルがオリジナルであることのなによりの証拠。
(下)ブレスレットももちろんオリジナル。全ての整合性が合う、本当に稀に見るThunderbirdです。

これほどまでに難しくとも、それでもやはり欲しいと思わされる魅力がThunderbirdにはあります。

スポーツともドレスともつかない見た目は一見すると中途半端ながら、そのはっきりとしすぎない柔軟なスタンスと余裕に、いかにも現代的な洗練を見ることができるのではないでしょうか。

ドレスウォッチが再評価される中、スポーツモデルが好きな方にとってはまさに今選ぶ一本として、またドレスモデルが好きな方にとっては上がりの一本としてもおすすめできるのがこのThunderbirdです。

そんなThunderbirdの中でも整合性とコンディションに申し分のない一本は、長年探し続けて、場合によっては失敗も重ね、ようやく出会えるかどうかという稀な存在です。

(Thank you, sold)

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