Frame France Unknown

Mar 15

1940年代から1950年代にかけて、フランスで生み出されたフレーム・フランス。眼鏡の生産が高度に機械化する以前に、小規模な工房での手作業で製作された眼鏡は、当時のフランスの風土や文化が滲んだような独特の存在感をまとっています。

決まった名前はなくとも、同じデザインのモデルが確かに複数存在し、数十年以上が経った現在でも圧倒的な存在感を放っている。そんな一本をディテールに注目しながらご紹介します。

柔和なラインの中に突如現れる直線的なカットが、当時のセルロイドならではの硬質な素材感を見事に引き立てています。
さらに眉尻の上がったような抑揚のあるトップライン、これらのささやかながら見事に的を得たディテールによって、他の何にも似ていない唯一無二の顔つきに仕上がっている一本です。

なによりも目をひくのは目尻に入った大胆なカット。全体としてはむしろ丸みがかったフロントシェイプ・レンズシェイプですが、それとは相反する直線的で鋭角的なカットが、全体のデザインに程よい緊張感を与えています。

またフロントを上から見ると、目尻のカットと同じ鋭角的な印象がここでも感じられることが分かります。生地からそのまま切り出したようシャープなエッジは、もちろん当時のセルロイドでしか出せません。

さらに現代では大量生産の汎用品が用いられることがほとんどの蝶番も、フレーム・フランスに用いられるのは全て手作業で削り出されたもの。しっかりとした金属の厚みがある蝶番には、生地に埋め込むのではなく置くように設置する「置蝶番」の技法と相まって、ヴィンテージならではの迫力を感じることができます。

フロントとテンプルの素材は言うまでもなくセルロイド。その透明感や艶感、また発色の良さは、当時の素材でなければ出せません。素材やパーツ、そのひとつひとつに当時の背景が色濃く反映されています。

フレーム・フランスには、先日ご紹介したParisianのように比較的身につけやすいモデルから、GARGOYLE / ROCKのようにフランス人の美的センスが注ぎ込まれたアヴァン・ギャルドまで、数多くのモデルが存在します。

今回ご紹介したのは、そのちょうど間にあるようなモデルです。特徴的なカッティングが目を引く一方で、実際にかけてみると意外なほどに顔に馴染み、ファッションに落とし込むことも難しくはありません。

しかしそれは、結局のところこのモデルが凡庸だということでは決してありません。特徴的なカッティングや抑揚のあるトップライン、そこに収まる垂れ目がちな玉型など、ディテールはどこをとっても独特そのものです。

それらが全体としてひとつに調和していることは、このモデルが何かの真似やコンセプトありきのものではなく、まさにオリジナルであることの証左です。

ぜひ店頭で手に取ってその迫力を知ってください。ご来店をお待ちしています。